マジックザギャザリングの競技において、一日にスイスラウンド7回戦、8回戦と戦うことは日常的である。先日、幕張メッセにて開催されたマジックスポットライト:Final Fantasyの初日は何と10回戦だった(宮野は7回戦で姿を消したらしい)。
一試合の時間が60分と長く、それが7回戦以上も続くとなると、いかに集中力を保つかが勝利のために肝要となってくる。ブドウ糖を補給したり、顎を使うことによって脳への血流の増加を期待してラムネやグミを食べるeスポーツ選手もいると見聞きする。また、集中力を高めるためにエナジードリンクを飲んだり、その逆にエナジードリンクは血糖値スパイクが切れた時に集中力が著しく低下するため、それを恐れて水だけを飲む選手も少なくない。
ゲームが高度に戦略性を増し、競技性が高まるほど、選手たちにとって集中力をいかに高めるかというのは最優先の課題となってくるのである。
そういった中、7月2日に「IESF Banned Arslan Ash Over Absurd Reason」という記事がネットに投稿され、Xを中心としたSNSで話題となった。
タイトルを日本語に訳すと「IESFが馬鹿げた理由でArslan Ashを競技からBANした」といったものである。
IESFとはInternational Esports Federation (国際eスポーツ連盟)の略であり、Arslan Ashというのは格闘ゲームタイトル『鉄拳』で何度も世界チャンピオンになっているパキスタン出身の現役最強選手のことである。
IESFはeスポーツをオリンピック競技とすることを目標にする団体で、年に一度「ワールドeスポーツチャンピオンシップ」という世界大会を主催しており、『鉄拳7』は2017年からこの大会の種目の一つとして採用されている。
アッシュは2022年から2024年の3年間にわたって「ワールドeスポーツチャンピオンシップ」からBANされており、理由はドーピング検査に引っかかったためであると発表された。
そして、このドーピング検査がいかに馬鹿げたものかというのがインターネット上で話題となっているのである。
ドーピング検査によってアッシュから検出された薬物は「anabolic-androgenic steroids (AAS)」
ステロイドであった。
このステロイドは主にボディービルダーが、筋肉や肉体的な強さを獲得するために使うものであり、アッシュ自身もステロイドを筋トレ目的で使ったことを認めている。
インタビューの中でアッシュは
「ステロイドは筋トレのために使った。コロナで全ての国際的な競技が無くなっていた状況であり、ステロイドがeスポーツシーンで禁止されているということを知らなかった。ゲームで有利になることを目的として薬物を使ったことは無いし、ステロイドがアンチドーピングルールに引っかかるリスクのあるものだと知ってから使うのは止めた。」
と答えた。
更に彼はIESFが行っているドーピング検査が、eスポーツ選手のためのものではなく、フィジカルスポーツ選手用のものと全く同じであったと暴露した。
IESFはオリンピックを目指し、IOCとの関係を深めていく中で、ドーピング検査の中身がIOCのルールに準拠したものとなっていたようである。
アッシュが投与していたタイプのステロイドには、ゲームの競技シーンで必要とされている反射神経の増進や集中力の向上、精密性、戦略的な判断力の向上などの効果は無く、その反対に、副作用として不安を覚えるようになったり、気分が揺らぎ、睡眠障害になるという、ゲームでのパフォーマンスを低下させるような効果が認められている。
こういったゲームとの関連性が薄いステロイドが厳しく制限される一方で、認知機能と反応速度を強化する効果のあるAdderall(アデロール)やModafinil(モダフィニル)といった薬物は規制されていない。
実際に、反応速度や精密性が強く求められるFPSの競技シーンにおいてはこれらの薬物を乱用しているチームや選手がいるのではないかと話題に上がることもある。
FFをきっかけにMTGを始めるプレイヤーが増え、ストリーマーの方々もイベントを開催したりして、これから益々人口が増えるだろう。それに伴って競技シーンの拡大という未来も0ではないだろう。
「ドローをするときは手札に直接加えないようにして、ダブルドローなどのイカサマを防ごう」というポストが話題になっていたように、カードゲームで不正と言えばイカサマがまず最初に浮かぶだろう。
MTGにおいてもイカサマと並んでドーピングが話題となる時代が到来するやもしれない・・・・
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